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2025.12.17

laco

ジン・デポ 神戸三宮店

なぜ誰もが予想を裏切られたのか? ラコ創業100周年記念モデル「Edition 100」に隠された4つの衝撃的な真実


導入部:100年の節目に、ラコが仕掛けた「美しい裏切り」


「Laco(ラコ)」と聞けば、多くの時計ファンが思い浮かべるのは、第二次世界大戦中のドイツ空軍に納入された、あの武骨で視認性抜群の「B-Uhr(観測時計)」だろう。その質実剛健なイメージは、ブランドの代名詞として深く刻み込まれている。だからこそ、2025年に記念すべき100周年を迎えたブランドが、その最大の節目に何を世に送り出すのか、誰もが固唾を飲んで見守っていた。誰もが、究極のパイロットウォッチの登場を予想していたはずだ。

しかし、ラコがベールを脱いだ記念モデル「Edition 100」は、その全ての予想を心地よく裏切る、息をのむほどにエレガントなドレスウォッチだった。これは単なるデザインの変更ではない。ブランドの魂の在り処を問い直す、深い意図が込められた選択だ。この記事では、この「美しい裏切り」に隠された、4つの衝撃的な真実を深掘りしていく。





1. 主役はパイロットウォッチではなかった:ブランドの「原点」への回帰


なぜ、ラコは最もアイコニックなパイロットウォッチではなく、クラシックなドレスウォッチを100周年の顔に選んだのか。その答えは、ブランドの歴史認識の深さにある。現代のラコのイメージは戦時下のB-Uhrによって強く形作られているが、それは100年の歴史の一部に過ぎない。

「Edition 100」が光を当てたのは、ブランドが誕生したドイツ宝飾産業の中心地、フォルツハイムの記憶だ。「黄金の街(Goldstadt)」と称されるこの地で、ラコは元来、優雅なケース製造と時計作りでその名を馳せていた。さらに1933年には自社製ムーブメントを製造する「Durowe」を設立し、真のマニュファクチュールとしての地位を確立した歴史を持つ。

この記念モデルは、戦争の記憶が刻まれる以前、1920年代から50年代にかけての、純粋に時計製造の美学を追求していた「原点」への回帰なのだ。そのシャンパンゴールドとブラックで構成された文字盤は、1930年代に流行した「セクターダイアル」や「タキシードダイアル」の系譜を汲むものであり、ブランドが本来持っていたエレガンスと芸術性を高らかに宣言している。

これは、ブランドが自身の歴史を単一のジャンルに限定せず、100年の全貌を包括的に表現しようとする意思の表れである。

つまり、この選択は単なるデザインの好みではなく、ラコが自らの100年の歩みを包括的に肯定し、未来へと継承していくという強い意志の表明なのである。





2. 見た目はクラシック、中身はハイテク:ヴィンテージの顔に隠された現代技術


この時計が単なる過去のデザインの復刻でないことは、その外装に採用された先進技術を見れば明らかだ。ヴィンテージの温かみのある表情の裏には、現代工学の粋が凝縮されている。

ゴールドIPコーティング


ケースの美しい金色は、安価な金メッキとは根本的に異なる。採用されているのは「IP(イオンプレーティング)」と呼ばれる現代的なPVD(物理蒸着)技術だ。これにより形成される皮膜は極めて硬く、ビッカース硬度で1000Hv以上に達することもある。これは通常のステンレススティール(約200Hv)を遥かに凌ぐ数値であり、日常使用での擦り傷に抜群の耐性を誇る。この時計が、数十年後もその輝きを失わない「実用品」として設計されていることの何よりの証拠だ。


ボックス型サファイアクリスタル


1950年代の時計に見られた、アクリル製風防の柔らかなドーム形状。あの温かみを再現しているのが、この「ボックス型サファイアクリスタル」だ。しかし素材はダイヤモンドに次ぐ硬度を持つサファイア。この立体的な形状は、分厚いサファイアの塊からダイヤモンドパウダーを用いて長時間かけて削り出すしかなく、製造コストは平面ガラスの数倍にもなる。ヴィンテージの美観と現代の堅牢性、この両立にラコの妥協なき姿勢が表れている。


最高等級の夜光塗料と窪みインデックス


針とアワーマーカーには、数あるスーパールミノバの中でも最高輝度を誇る「C3」グレードを採用。その自然なクリーム色は、日中にはヴィンテージの風合いを醸し出し、暗闇では力強く発光する。さらに文字盤のアウターリングに刻まれたインデックスは、一段掘り下げられた「窪みインデックス(Recessed indices)」となっており、微細な段差が光と影の複雑な表情を生み出す。これらはコストを度外視した、高級時計ならではのディテールだ。


「革のダイヤモンド」シェルコードバン


ストラップに選ばれたのは、「革のダイヤモンド」と称されるシェルコードバン。農耕馬の臀部から僅かしか採れない高密度の繊維層から作られ、牛革の数倍の強度を誇る。使い込むほどに波打つような美しい艶が生まれ、持ち主の腕に完璧に馴染んでいく。これもまた、美観と耐久性を両立させるための究極の選択である。




 


3. 薄さ9.8mmの秘密:心臓部に選ばれた「格上のエンジン」


この時計を手に取って誰もが驚くのが、その薄さだ。自動巻きでありながら9.8mmという、10mmの壁を切るスリムなプロポーション。このエレガンスを実現できた秘密は、心臓部であるムーブメントの選択にある。

搭載されているのは「Laco 300」。これはスイスのセリタ社製「SW300-1」をベースにした高級薄型ムーブメントだ。その厚さは、多くの時計に採用される汎用機(SW200-1など)より1.0mmも薄い。この1mmが、シャツの袖口に干渉せず滑らかに出入りする、ドレスウォッチとしての品格を決定づけているのだ。

さらに、この選択は単なる技術的な優位性だけを狙ったものではない。かつて自社でムーブメント製造を手掛けたマニュファクチュール「Durowe」の血を引くラコにとって、100周年の心臓部に格上の薄型エンジンを選ぶことは、自らの技術的矜持へのオマージュなのである。

  • 厚さ: 一般的なムーブメント(4.60mm)に対し、Laco 300は3.60mmと極めて薄い。

  • パワーリザーブ: 一般的な約38時間に対し、Laco 300は約56時間と大幅に長い。






 

4. 究極の希少性:神戸の専門店で、たった「2人」だけ


この時計の価値を決定づける最後の、そして最大の衝撃。それは、その圧倒的な希少性だ。

世界限定100本という数字だけでも十分希少だが、真実はその先にある。信頼できる情報によれば、日本国内への入荷は、神戸の名店**「時計のミヤコ」に割り当てられた、わずか「2本」**のみ。これはもはや「限定品」という言葉では表現しきれない。世界中の時計愛好家が注目する100周年記念モデルを、この日本で手にできるのは、この店を訪れるたった2人しかいないのだ。

この事実は、この時計が単なる製品ではなく、歴史的価値を持つ「入手困難な工芸品」であることを意味する。所有するという行為そのものが、特別な体験となるだろう。それは、単に時計を買うのではなく、ラコの100年の歴史における、ごく一握りの証人になるということなのだ。

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結論:歴史の継承者となる、ということ


ラコの「Edition 100」は、我々の予想をあらゆる面で超えてきた。それは単に美しい時計というだけではない。ブランドの「パイロットウォッチ以前」の記憶を呼び覚まし、現代の技術でその輝きを未来永劫のものとし、選び抜かれたムーブメントでマニュファクチュールの魂を表現し、そして極限の希少性で所有する意味を問いかける。

これは、ラコの100年の歴史と未来への意志が凝縮された「歴史的証言」そのものだ。

100年の歴史の集大成を腕にすることの意味とは、一体何だろうか? この時計は、その答えを静かに、しかし雄弁に語りかけてくる。