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2025.12.22

TUTIMA GLASHUTTE

ジン・デポ 神戸三宮店

見た目は戦車、重さは羽? チュチマM2クロノグラフに隠された5つの驚くべき真実


見た目は戦車、重さは羽?


チュチマM2クロノグラフに隠された5つの驚くべき真実


Introduction: A Tool Watch That Defies Expectations


「ツールウォッチ」という言葉は、時計好きなら誰もが心惹かれる響きを持っています。しかし、現代市場に溢れるその多くは、屈強なデザインを纏っただけのファッションアイテムに過ぎないかもしれません。プロフェッショナルのための道具、という本来の意味を追求した時計は、実はごく僅かです。

チュチマ・グラスヒュッテのM2クロノグラフは、その数少ない「本物」の一つ。1984年にドイツ連邦空軍の制式採用となった伝説の「NATOクロノグラフ (Ref. 798)」の輝かしい血統を受け継ぎ、一切の妥協を排して生み出された計器です。一見すると、その姿は無骨で巨大な金属の塊。しかし、その奥には驚くべき矛盾と秘密が隠されています。本記事では、この時計の仕様と歴史を深く掘り下げ、M2クロノグラフを真に特別な存在たらしめる、5つの驚くべき真実を解き明かしていきます。





1. 46mmの巨体は、驚くほど軽い。素材の魔術「ピュアチタン」


M2クロノグラフを初めて見た人は、その直径46mmという圧倒的なサイズ感に気圧されるでしょう。まるで戦車のような堅牢な外観から、誰もがずっしりとした重さを想像するはずです。しかし、実際に手に取ると、その予想は心地よく裏切られます。



この驚くべき軽さの秘密は、ケース素材に採用された「ピュアチタン(グレード2)」にあります。もしこの巨大なケースが一般的なステンレススチールで作られていれば、重量は180gを優に超えていたでしょう。しかし、チタンを用いることで、その重さは実測値でわずか127gにまで抑えられています。

しかし、チュチマがチタンを選んだ理由は快適さだけではありません。軍用計器として重要なのは、衝撃に対する「靭性(じんせい)」、つまり粘り強さです。ピュアチタンは変形することでエネルギーを吸収し、致命的な破損を防ぎます。これは、硬いものの衝撃で砕けやすいセラミックのような素材とは対照的です。さらに、目に見えない部分にもプロの道具としての思想が貫かれています。チタンケースの内側には軟鉄製インナーケースが隠されており、ムーブメントを現代生活に溢れる磁気から守る「見えざる盾」として機能しているのです。加えて、熱伝導率が低いという実用的なメリットも。冬の寒い日に腕に着けても、ステンレスのような「ヒヤッ」とする衝撃がなく、すぐに肌に馴染むのです。





2. 伝説のムーブメントの魂を宿す。執念の「キャリバー Tutima 521」


この時計の心臓部には、チュチマの技術者たちの執念とも言える物語が秘められています。M2の前身である伝説的な「NATOクロノグラフ」には、「レマニア5100」という傑作ムーブメントが搭載されていました。このムーブメントがパイロットたちに崇拝された最大の理由が、「センターミニッツ」機能です。

これはクロノグラフで計測した「分」を、秒針と同じく文字盤中央の大きな針で表示する機構。激しく揺れるコックピット内でも、小さなサブダイヤルを凝視することなく、瞬時に経過時間を直感的に読み取れるため、パイロットにとって絶対的なアドバンテージでした。しかし、このレマニア5100は生産終了となり、多くのブランドがこの究極の視認性を諦めざるを得ませんでした。

チュチマの答えは「妥協しない」ことでした。彼らは、信頼性の高い現代のムーブメント「ETAバルジュー7750」をベースに、センターミニッツ機能を完璧に再現するための大規模な改造を断行。そうして生まれたのが、独自の「キャリバー Tutima 521」です。さらに驚くべきは、単にセンターミニッツを再現しただけでなく、オリジナルのレマニア5100が持っていた12時位置の「24時間表示」までも忠実に残した点です。潜水艦や地下壕など太陽光が届かない環境で昼夜を識別するこの機能は、チュチマの軍用規格への絶対的な忠誠心を示しています。機能性への一切の妥協を許さない、その執念がこの時計の操作感にも表れています。

「ボタンを押した際の感触は、カチッという軽い音ではなく、機械が噛み合う『ガツッ』という重厚な感触と音を伴う。」

一つの重要な機能のために、これほどの労力を注ぎ込む姿勢。これこそが、M2が単なる高級品ではなく、真のプロフェッショナル・インストゥルメントであることの何よりの証明です。





3. 巨大なのに腕に馴染む。「ラグレス」という設計思想


「直径46mmの時計なんて、自分の腕には大きすぎる」と考えるのは当然です。しかし、M2クロノグラフはここでも常識を覆します。その秘密は、時計本体とベルトを繋ぐ「ラグ」と呼ばれる突起部分が存在しない、「ラグレス」デザインにあります。

一般的な時計では、ケースの直径に加えて上下のラグの長さが、実際の装着サイズ(ラグ・トゥ・ラグ)を決定します。しかしM2は、ストラップがケースの底面に直接統合される設計のため、46mmという直径がそのまま手首の上での全長となります。これにより、数値から想像するよりも遥かにコンパクトに、そして驚くほど快適に腕にフィットするのです。

もちろん、この設計にも機能的な理由があります。これは、軍用機パイロットの装備やパラシュートのラインなどに時計が引っかかる事故を防ぐための、軍用航空計器としての血統から受け継がれた、極めて実践的な設計思想なのです。





4. 防弾ベストと同じ素材? 「育てる」ケブラーベルト


M2クロノグラフとの付き合いは、そのユニークなストラップを手懐けることから始まります。標準装備されているのは、防弾ベストにも使用されるパラ系アラミド繊維「ケブラー」製のストラップ。同じ重量で鋼鉄の約5倍の強度を誇る、地上最強クラスの繊維です。

このストラップは、新品の状態では非常に硬いことで知られています。しかし、それは欠点ではありません。むしろ、高密度な本物の繊維が使われていることの証です。使い込むうちに、この強靭な繊維は持ち主の手首の形を記憶し、少しずつ馴染んでいきます。時間をかけて自分だけの一本に「育てる」というプロセスは、この時計を単なる道具から、かけがえのない相棒へと昇華させてくれるのです。完全に体にフィットした時、それは世界に一つだけの、あなた専用のギアとなるでしょう。





5. この時計は「復活」ではない。「生き残り」の証だ


M2クロノグラフの背景にある最も深い物語は、チュチマというブランドそのものの歴史です。グラスヒュッテには有名な時計ブランドが数多くありますが、A.ランゲ&ゾーネやグラスヒュッテ・オリジナルといったその多くは、戦争と東西分断の時代に一度活動を停止し、後に「再興(revived)」された歴史を持ちます。しかし、チュチマは違います。彼らは「生き残り(survivor)」なのです。

その運命を決定づけたのは1945年。ソビエト軍がグラスヒュッテを占領するわずか数時間前、創業者と主要な技術者たちは、会社の命運を左右する重要な部品と設計図を手に西ドイツへと脱出しました。東側に残った多くの工場が解体・国営化される中、チュチマだけがブランドの系譜を「継続」させ、西側で独立したメーカーとして存続し続けたのです。

この時計は、単に過去のデザインを復刻したモデルではありません。20世紀の激動を乗り越え、決して途切れることのなかった不屈の歴史の直系の子孫であり、その物語を体現する物理的な証なのです。

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Conclusion: The Weight of Purpose


チュチマM2クロノグラフは、見事な矛盾の集合体です。その歴史と機能は重厚でありながら、チタンの体は驚くほど軽い。軍用計器としての冷徹な機能美と、所有する喜びを満たす美学が共存しています。この時計を腕にすることは、時間を知る以上の意味を持ちます。スマートウォッチが時間を支配する現代において、これほどまでに純粋な『目的』を持って生み出された道具を腕にすることの意味とは、一体何だろうか?

https://www.miyako1912.co.jp/watch/brand/tutima/products/m2-chronograph_6450-04/

M2 クロノグラフ Ref.6450-04
Ref:6450-04

¥715,000 (税込)